垂直精度±3㎜というのが、業界の一般的な許容範囲。これ以上の歪みが出ると、建物の強度や出来映えに大きな影響が出てしまう。コンピュータを使わずに人間の手で、図面との誤差を±3㎜以内におさめること。それが、型枠工事の重要な仕事なのです。
建物によっては、壁面・屋根などに複雑で多彩なデザインがなされ、優れた技術が要求される仕事でもあります。また世界的に有名な建築家安藤忠雄氏の作品、住吉の長屋(1976年)光の教会、茨木春日丘教会(1989年)、国際芸術センター(2001年)光の美術館(2011年)など、コンクリートの素肌をそのまま建物表面の仕上げにした『化粧打ち放し仕上げ』などの躯体の美しさとこだわりを支えているのは、実は精緻な型枠大工の技術であり型枠工事なのであります。
1. 型枠の拾い出し(型枠加工図の作成)
施工図面から、柱・梁・壁・床の寸法、形状をパソコンを使って拾い出し、加工図を作成したのち、必要資材の数量を積算し発注します。
- 拾い出し作業
- 施工図面
- 加工図
2. 加工(板割り)
拾い出し作業で作成した加工図をもとに、ベニヤ板・桟木を切断して型枠を製作します。工具は、ハンマー、
釘打機、電動丸ノコを使って製作します。
- ベニヤ板の板割り
- ベニヤ板の加工作業
- 使用工具
3. 墨出し
施工図をもとに、型枠を組立てる柱の位置や大きさ及び壁の位置や厚さを、正確にコンクリート床面に墨を打つ作業をします。この線や印を付ける時に、墨壺(すみつぼ)を使用するので墨出し(すみだし)と呼ばれています。
墨出し作業後には、墨を打ったところに合わせて、型枠を建込ます。
- コンクリート床面に墨を打つ
- コンクリート釘で桟木を打つ
4. 型枠の建込
加工した型枠を、墨出しをした墨の位置に合わせて建てる作業です。型枠の建込の精度が、建物全体の出来を左右する重要な作業となります。また型枠は、建物の精度と強度が必要とされるため、組立作業中は垂直・水平に建込まれているかに注意をしながら作業をします。型枠を建てた後は、コンクリートを入れても変形しないように鋼管で締め付けて完了です。
- 柱型枠の建込
- 壁型枠の建込
- 梁掛け
5. コンクリートの打設(この作業は別の専門業者が行います。)
建込した型枠の中にコンクリート流し込みます。コンクリート打設は別の業者が行いますが、流動性のあるコンクリートを流し込むため、型枠にはかなりの圧力がかかるので、打設前点検及び打設中の型枠の点検は型枠大工の重要な仕事です。
- コンクリートミキサー車の作業
- コンクリート打設作業中
- コンクリート打設作業終了
6. 型枠の解体
型枠に流し込んだコンクリートが固まり、強度が出た時点で型枠を取り外します。危険を伴う作業ですので、
解体は壁、梁、スラブの順に日数をおいて解体していきます。型枠解体作業が終わると、型枠工事は完了です。その後、仕上げ工事がはじまります。直線だけではなく曲面など様々なコンクリート面があります。
- 壁面の解体
- 解体作業完了